十勝廃線探訪の旅・3日目
2003年4月28日★6時に宿を出て「熱気球体験乗車」へ。この体験乗車は毎年5月から10月に掛けて行っているもので、幸運なことに今年は今日からの営業となる。開催は気候条件に依存していて、特に強風には弱く、今日のような殆ど無風の状態は最適とのこと。四隅からロープで係留された気球は精々高さ20m程しか上がらないが、南は糠平湖から北はウペペサンケ山まで、思ったよりもかなりの視界が開ける。残念なことに石狩岳から北は山陰に隠れてちょっと見えないようだ。時々微風が吹くと、気球の着地点が大幅に変わるのは面白く、成程これでは強風の時には飛ばせないなと納得する。
今日の目的は丸一日掛けて糠平周辺に点在する旧国鉄士幌線の橋梁を一巡りすること。これらの橋梁は単なる鉄道の遺構という意味合いを越えて、その優美さから「ひがし大雪アーチ橋」として北海道遺産として登録されている程。NPOひがし大雪アーチ橋友の会から送っていただいたアーチ橋散策地図を片手に、まずは糠平より北にある橋梁を見ようと国道273号線を北上する。三の沢橋を越えて直ぐの駐車場に車を停めて見下ろすと、国道に隣接するように長さ40mの三の沢橋梁がある。橋梁そのものは立入禁止なので、駐車場脇から橋の袂を通って雪で埋まった沢の少し上に降り、そのまま糠平湖の方に少し歩いて、橋梁の全景を写真に収める。
・NPOひがし大雪アーチ橋友の会
http://www3.ocn.ne.jp/~arch/
続いて今回の旅の最大の目的であるタウシュベツ川橋梁に向かう。幌加発電所そばの丸山橋の先を右折して糠平三股林道を4km走るのだが、多少の落石はあったものの、無事に林道脇の駐車場に到着。車を停めてここから少し歩く。薄暗い林を抜けると、突然目の前にコンクリート橋が現れる。1937年建設、長さ130mのタウシュベツ川橋梁である。この橋は糠平湖の水位によって現れたり沈んだりするので幻の橋と呼ばれている。昨年10月に眺めた時は半分以上が隠れてしまっていたが、今回はその全景を見せており、想像以上に縦長の橋であることが分かる。それ以上に驚いたのは、この橋梁の幅の狭いことか。水位が低いとは言え、橋梁の下を流れるタウシュベツ川の流れは、雪解けの時期ともあってかなり速く、対岸に渡るには狭い橋の上を歩くしか方法は無い。何とか対岸に渡り、後方の東大雪の山々をバックに橋の全景を収めてみるが、どことなく物足りない。湖底まで降りて泥濘に足を取られ掛けながらの撮影もやってみたのだが、これもピンと来ない。成程、このタウシュベツ川橋梁が最も美しく見えるのは、半分程度湖に沈んで湖面にその姿を映している時なのだ。崩れかけた橋脚のコンクリートに、糠平湖を作る為に切られた木々の切り株が点在する干上がった湖底。美しくもあるが、同時に打ち捨てられた存在が発する無言の恨みの言葉が聞こえてくるかのようだった。
国道273号線に戻り、少し走って北海道開発局幌加除雪ステーションの駐車場に車を入れる。すぐ傍に幌加駅のプラットホーム跡とレールが見える。5分ほど歩くと第五音更川橋梁に出る。橋梁の直下は崖になっていて、とても下に降りることは出来ないが、幸い国道「滝ノ沢橋」から全景が眺められるらしい。幌加除雪ステーションから滝ノ沢橋までは至近なので、国道脇を歩いて行って見ることにする。長さ109mの長大アーチ橋で、考えてみるとこの橋ならば幌加付近を通過する時に今までに何度も見ていて記憶にも残っているのだが、こうしてじっくり見ると実に見事な橋である。お急ぎの向きもこの橋ぐらいは立ち止まってじっくり見て欲しいと思う。
長大橋梁では最北端にある十三の沢橋梁へ。国道から見えるのかと思い込んでいたのだが、廃線跡そのものが見えないのでは橋梁が見えよう筈も無い。反対側の山中には天狗の滝なるものがあると記されているのだが、こちらも判然としない。駐車場の傍には「13の沢林道」「13の沢1本沢支線/12の沢」「タウシュベツシンノスケ/3の沢連絡/13の沢左股」各林道入口というトーテムポールのような看板が出ていたので、取りあえずそちらに向かってみる。林道入口のすぐ近くで倒木があり、そちらは脇を何とか通り抜けたのだが、続いて出てきた緑風橋なる橋の先には、更に大規模な倒木と雪で埋もれた林道が見える。橋の手前で車を停め少しく歩いてみたのだが、廃線跡らしきものは見つからず、折しも雨が降り出したので探索を一度ここで打ち切ることにする。
三股まで北上して、ログハウスの小さな喫茶店「三股山荘」で昼食。ここは何度も横を通ったことがあるのだが、営業時間外が多くて、訪れたのは今回が初めて。「牧場のランチ」とか言う、ソーセージとジャガイモのセットを頼む。小洒落てはいるけれど量的には然程でもないプレートをいただきながら、アーチ橋の話を伺う。聞けば件の「十三の沢橋梁」は、例の林道を入って暫く進み、廃線跡と交差した地点から路盤を辿っていかないと行けないらしい。しかしまだ林道は車が通行可能な状態ではない筈だし、何より羆の多発時期なので、無理はしない方がいいですよ、とのこと。
国道脇の駐車場に車を停め、再び熊鈴を付けて13の沢林道へと向かう。8〜9分ほど歩いたところで廃線跡を発見し、そこを右折。駐車場から約12分で十三の沢橋梁に到着。橋梁そのものは立入禁止の柵で封じられているが、柵の脇からロープが垂れていて、そこから橋の袂まで降りられるらしい。幸いなことに雨も止んだため、沢まで降りてみることにする。長さ58mのこの橋梁、規模的には中程度ではあるものの、鬱蒼とした林の中に屹立する姿は、幽玄という表現が相応しい。
時に13時半、時間的な余裕があるので、幌加温泉に立ち寄る。ここには温泉宿が2軒あるが、今回は奥に位置する「湯元鹿の谷」にする。先客は3名ほどで、皆思い思いにのんびり寛いでいる。ここは3つの内湯と露天風呂で併せて4種類の異なった泉質を楽しめるのが特徴で、特に露天の硫黄泉はちょっと温めなのでなかなか出られない。かなりゆっくりと入っていたつもりだが、出てきた時には30分余しか経過していなかった。
糠平温泉街の外れにあるキャンプ場から糠平川橋梁を見学してから国道273号線に戻り、糠平大橋の少し先を左折して糠平ダムに向かう細い道路を上る。丁度国道トンネルの真上付近から正面遠方の山中に巨大な陸橋を発見。これが「中の沢陸橋」で、見事な橋だけれどこれは判り難い。
更に少しだけ南下し、鱒見トンネルの手前脇のスペースに車を停めて、トンネルの脇まで歩いていくと、上方に新線の「下の沢陸橋」(1955年建設、長さ47m)が、下方に旧線の「第二音更川陸橋」(1936年建設、長さ63m)が一度に見渡せる。翻って国道沿いにほんの少し北に移ると、今度は「第四音更川橋梁」(1936年建設、長さ91m)が林の中に見え隠れしている。長大橋梁を一度に3つも見られるとは、少々得をした気分である。
糠平発電所を過ぎ、泉翠橋を渡る際に右手に注目したのだが、最後の橋梁・第三音更川橋梁が見つからない。一旦引き返し、泉翠橋の袂に車を停めて歩いて戻ってみると、国道よりも低い位置に路盤が設置されていて、帯広方面への車線からは見えなくて当然だったらしい。泉翠橋の南側から廃線跡に、また更にそこから橋の下まで降りることが出来る。第三音更川橋梁付近は「泉翠峡」と呼ばれる渓谷で、文字通り緑色に染まった川面が切り立った渓谷の中をゆったりと流れていく様は、心に安らぎを与えてくれるようだ。
今日の目的は丸一日掛けて糠平周辺に点在する旧国鉄士幌線の橋梁を一巡りすること。これらの橋梁は単なる鉄道の遺構という意味合いを越えて、その優美さから「ひがし大雪アーチ橋」として北海道遺産として登録されている程。NPOひがし大雪アーチ橋友の会から送っていただいたアーチ橋散策地図を片手に、まずは糠平より北にある橋梁を見ようと国道273号線を北上する。三の沢橋を越えて直ぐの駐車場に車を停めて見下ろすと、国道に隣接するように長さ40mの三の沢橋梁がある。橋梁そのものは立入禁止なので、駐車場脇から橋の袂を通って雪で埋まった沢の少し上に降り、そのまま糠平湖の方に少し歩いて、橋梁の全景を写真に収める。
・NPOひがし大雪アーチ橋友の会
http://www3.ocn.ne.jp/~arch/
続いて今回の旅の最大の目的であるタウシュベツ川橋梁に向かう。幌加発電所そばの丸山橋の先を右折して糠平三股林道を4km走るのだが、多少の落石はあったものの、無事に林道脇の駐車場に到着。車を停めてここから少し歩く。薄暗い林を抜けると、突然目の前にコンクリート橋が現れる。1937年建設、長さ130mのタウシュベツ川橋梁である。この橋は糠平湖の水位によって現れたり沈んだりするので幻の橋と呼ばれている。昨年10月に眺めた時は半分以上が隠れてしまっていたが、今回はその全景を見せており、想像以上に縦長の橋であることが分かる。それ以上に驚いたのは、この橋梁の幅の狭いことか。水位が低いとは言え、橋梁の下を流れるタウシュベツ川の流れは、雪解けの時期ともあってかなり速く、対岸に渡るには狭い橋の上を歩くしか方法は無い。何とか対岸に渡り、後方の東大雪の山々をバックに橋の全景を収めてみるが、どことなく物足りない。湖底まで降りて泥濘に足を取られ掛けながらの撮影もやってみたのだが、これもピンと来ない。成程、このタウシュベツ川橋梁が最も美しく見えるのは、半分程度湖に沈んで湖面にその姿を映している時なのだ。崩れかけた橋脚のコンクリートに、糠平湖を作る為に切られた木々の切り株が点在する干上がった湖底。美しくもあるが、同時に打ち捨てられた存在が発する無言の恨みの言葉が聞こえてくるかのようだった。
国道273号線に戻り、少し走って北海道開発局幌加除雪ステーションの駐車場に車を入れる。すぐ傍に幌加駅のプラットホーム跡とレールが見える。5分ほど歩くと第五音更川橋梁に出る。橋梁の直下は崖になっていて、とても下に降りることは出来ないが、幸い国道「滝ノ沢橋」から全景が眺められるらしい。幌加除雪ステーションから滝ノ沢橋までは至近なので、国道脇を歩いて行って見ることにする。長さ109mの長大アーチ橋で、考えてみるとこの橋ならば幌加付近を通過する時に今までに何度も見ていて記憶にも残っているのだが、こうしてじっくり見ると実に見事な橋である。お急ぎの向きもこの橋ぐらいは立ち止まってじっくり見て欲しいと思う。
長大橋梁では最北端にある十三の沢橋梁へ。国道から見えるのかと思い込んでいたのだが、廃線跡そのものが見えないのでは橋梁が見えよう筈も無い。反対側の山中には天狗の滝なるものがあると記されているのだが、こちらも判然としない。駐車場の傍には「13の沢林道」「13の沢1本沢支線/12の沢」「タウシュベツシンノスケ/3の沢連絡/13の沢左股」各林道入口というトーテムポールのような看板が出ていたので、取りあえずそちらに向かってみる。林道入口のすぐ近くで倒木があり、そちらは脇を何とか通り抜けたのだが、続いて出てきた緑風橋なる橋の先には、更に大規模な倒木と雪で埋もれた林道が見える。橋の手前で車を停め少しく歩いてみたのだが、廃線跡らしきものは見つからず、折しも雨が降り出したので探索を一度ここで打ち切ることにする。
三股まで北上して、ログハウスの小さな喫茶店「三股山荘」で昼食。ここは何度も横を通ったことがあるのだが、営業時間外が多くて、訪れたのは今回が初めて。「牧場のランチ」とか言う、ソーセージとジャガイモのセットを頼む。小洒落てはいるけれど量的には然程でもないプレートをいただきながら、アーチ橋の話を伺う。聞けば件の「十三の沢橋梁」は、例の林道を入って暫く進み、廃線跡と交差した地点から路盤を辿っていかないと行けないらしい。しかしまだ林道は車が通行可能な状態ではない筈だし、何より羆の多発時期なので、無理はしない方がいいですよ、とのこと。
国道脇の駐車場に車を停め、再び熊鈴を付けて13の沢林道へと向かう。8〜9分ほど歩いたところで廃線跡を発見し、そこを右折。駐車場から約12分で十三の沢橋梁に到着。橋梁そのものは立入禁止の柵で封じられているが、柵の脇からロープが垂れていて、そこから橋の袂まで降りられるらしい。幸いなことに雨も止んだため、沢まで降りてみることにする。長さ58mのこの橋梁、規模的には中程度ではあるものの、鬱蒼とした林の中に屹立する姿は、幽玄という表現が相応しい。
時に13時半、時間的な余裕があるので、幌加温泉に立ち寄る。ここには温泉宿が2軒あるが、今回は奥に位置する「湯元鹿の谷」にする。先客は3名ほどで、皆思い思いにのんびり寛いでいる。ここは3つの内湯と露天風呂で併せて4種類の異なった泉質を楽しめるのが特徴で、特に露天の硫黄泉はちょっと温めなのでなかなか出られない。かなりゆっくりと入っていたつもりだが、出てきた時には30分余しか経過していなかった。
糠平温泉街の外れにあるキャンプ場から糠平川橋梁を見学してから国道273号線に戻り、糠平大橋の少し先を左折して糠平ダムに向かう細い道路を上る。丁度国道トンネルの真上付近から正面遠方の山中に巨大な陸橋を発見。これが「中の沢陸橋」で、見事な橋だけれどこれは判り難い。
更に少しだけ南下し、鱒見トンネルの手前脇のスペースに車を停めて、トンネルの脇まで歩いていくと、上方に新線の「下の沢陸橋」(1955年建設、長さ47m)が、下方に旧線の「第二音更川陸橋」(1936年建設、長さ63m)が一度に見渡せる。翻って国道沿いにほんの少し北に移ると、今度は「第四音更川橋梁」(1936年建設、長さ91m)が林の中に見え隠れしている。長大橋梁を一度に3つも見られるとは、少々得をした気分である。
糠平発電所を過ぎ、泉翠橋を渡る際に右手に注目したのだが、最後の橋梁・第三音更川橋梁が見つからない。一旦引き返し、泉翠橋の袂に車を停めて歩いて戻ってみると、国道よりも低い位置に路盤が設置されていて、帯広方面への車線からは見えなくて当然だったらしい。泉翠橋の南側から廃線跡に、また更にそこから橋の下まで降りることが出来る。第三音更川橋梁付近は「泉翠峡」と呼ばれる渓谷で、文字通り緑色に染まった川面が切り立った渓谷の中をゆったりと流れていく様は、心に安らぎを与えてくれるようだ。
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