★ホテルを一旦チェックアウトして名張駅の駅員氏に赤目四十八滝の話を聞くと、近鉄が作ったイラストマップを呉れる。親切なことである。もう一度ホテルに引き返し、ハイキング装備以外の荷物を預かって貰う。

名張から赤目口までは一駅。ちょっと早めに着き過ぎたので始発バスの時刻まで暫く待つことになる。今日は日曜なのでバスもかなり混むのではないかと予想していたのだが、結局乗客は僅か2名。赤目滝バス停までは僅か10分の距離。

赤目滝の入口には日本サンショウウオセンターがあり、入場料300円を支払うことになる。この300円は赤目滝渓谷内の維持管理を目的とした入山料であって、サンショウウオセンターとは関係無いらしい。世界のサンショウウオを集めたというこのサンショウウオセンターも私にはかなり面白く、危うく長居しそうになって少々慌てる。

サンショウウオセンターを出て遊歩道を歩く。登山道ではなく明らかに遊歩道と言ってもいいぐらいの徹底的に整備された道で、ストックを持ってきたのが馬鹿らしいぐらい。滝の一つ一つに標識が付いているのだけれども、ちょっとした斜行にも「滝」として名称が冠せられていて、これでは何十もの滝があることになるなと思う。それでも立派な滝も中にはあって、不動滝、千手滝、布引滝、荷担滝、琵琶滝の5つが赤目五瀑と呼ばれているらしい。私としては入口から3.2km地点にある荷担滝が最も好みかと。なお、遊歩道も茶店のある千手滝までは「極めて良く整備されている」が、その先は岩場を歩くような箇所もあって、余りに安直過ぎる靴は禁物だろう。

殆どの人間は滝巡りの終点・岩窟滝をから元の道を引き返すのだが、私はこの先、山越えをする予定なのでそのまま遊歩道を進む。ここから先はせせらぎと鳥の囀りを聴きながら、小川に沿って歩くのんびりコースになる。1km程歩くと出合茶屋に到着。ここより名張行きのバスも季節運転されているのだが、私はここから一山越えて反対側の落合からバスに乗る予定にしている。茶店の呼び込みをあっさり躱し、林道を少し下ったところから左手のコンクリート道をひたすら登る。勾配は結構なものだが、距離的には僅か500m程度、しかもコンクリート道なのだから簡単に頂上の小笹峠に着いてしまう。峠から少し降りるとコンクリートが切れて山道となる。

急な階段を登り切ると、後はひたすら下るのみ。距離にして1.5km程度か、ひたすら下りに下る。距離的には一昨日登った大杉谷・堂倉滝〜堂倉避難小屋と同じぐらいで、勾配は半分程度だから標高差にして150m程度だろうか。下りている時はこんな急勾配を登れと言われたら嫌だと思ったのだけれど、実際に登ってみればそれほどキツくないのかもしれないなとも思う。この山中で人と擦れ違うことはあるまいと思っていたのだが、意外とメジャーなルートらしく、数人のハイカーと擦れ違う。日曜日で多客期というのもあろう。後で聞いた話だが、この小笹峠越えはともかく、赤目四十八滝のサンショウウオセンター〜千手滝間は休日の昼間ともなると「人が詰まって身動きが取れなくなる」ぐらい混むのだそうだ。夏休み期間、日曜日、晴天と条件が揃っていながら悠然と遊歩道を歩けたのは、時刻が早かったおかげらしい。

山道を下り、落合バス停に到着。目の前を流れる青蓮寺川の流れが涼しげである。この落合付近から下流の河鹿橋辺りまでの渓谷を香落渓(こおちだに)と呼び、柱状節理の岩壁が左右に展開する。香落渓の風景は落合から名張に向かうバスの車窓から眺められるのだが、バス停から900m程上流側にも一つ大きな岩があるらしいので、川に沿って走る県道48号名張曽爾線を少しく歩いてみる。20分程で小太郎岩という巨岩を眺められる場所に到着。 幸いこの小太郎岩付近にもバス停があり、予備で残しておいた赤飯おむすびを噛りながらバスを待つ。

名張行きのバスは香落渓の景観美を楽しませてくれた後、今度は青蓮寺湖に沿って走る。釣りやボートなど皆思い思いの休日を過ごしているらしい。見た目にも涼しげだが、これはエアコンの効いた車内に一人で乗っているからそう感じるのかもしれない。青蓮寺ダムを過ぎると景観は急に平凡になり、あっと言う間に名張に着いてしまう。

名張から伊賀神戸経由で田園地帯を抜け、上野市街に入ると急に駅間距離が短くなったように感じる。上野市着1308。駅前の観光案内所でマップと観光ポイントを聞いてから、予約しておいたホテルに荷物だけ預けに行く。

駅前に戻り、上野公園に向かう。この公園の周辺には、上野出身の俳人・松尾芭蕉に纏る芭蕉翁記念館、伊賀流忍者博物館、俳聖殿、上野城、だんじり会館などが近距離で点在しており、観光客にはなかなか便利である。松尾芭蕉の姿をモチーフにしたという俳聖殿も面白かったが、個人的には上野の祭り「だんじり」を紹介した「だんじり会館」に興味を惹かれた。趣向を凝らした出汁に、珍しい「鬼行列」。是非一度この目で見てみたいと思う。なお、忍者博物館は絡繰屋敷、展示資料とも充実はしていたものの、紹介の仕方が何とも子供騙しで少々興醒めであった。

だんじり会館に隣接した「伊賀上野地場産買物処」にて白瓜の漬物「養肝漬(昔味、新味)」「伊賀越」と、麦芽飴「じょうせん米飴」を購入し、郵便局に立ち寄ってから、芭蕉生家を外からだけ眺め、寺町を通って市街地の南端に近い「蓑虫庵」を訪ねる。芭蕉翁五庵の一つで蕉門伊賀連衆・服部土芳が結んだ庵で、芭蕉翁が「みの虫の音をききにこよ草の庵」と賛したことから「蓑虫庵」と名付けられた由。周辺に住宅が立ち並んでしまっている今においても静寂な佇まいを見せてくれる庵に、心の安寧を感じるのは私だけでは無かろう。忍者博物館も悪くないが、上野市を訪れたのならば是非ともこの庵を訪ねて欲しいと思う。

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